Pocket

なぜ、職場の人たちは目覚めるのか?

 

会社勤めをしたことのある方ならば、達成感のある仕事をしたいと感じる方も多いと思います。働く際に「仕事のやりがい」「モチベーション」はとても大切です。

ところが仕事が楽しくない、やりがいを感じない方も多いのが現実です。自分たちの仕事に価値があるのだろうかと悩むうちに色々なことを諦めてしまい、言われたことだけやればよいと考えるようになってしまうのです。時には、職場の改善はひと苦労です。「それ(改善)は自分たちの責任ではない」と思う人たちも珍しくありません。

これは、あるプロジェクトでメーカーの品質保証部門の方とお仕事をした際のお話です。

品質保証部門とは、顧客に納品される製品の品質が問題ないことを保証する部門です。ここでご紹介する部門のメイン業務は、納品前の最終品質確認です。限られた人数、時間の中で高度な仕事をする必要があります。しかも、品質保証部門と設計部門は同じゴールを目指しているはずなのに、なぜか関係がギクシャクしてしまいます。品質保証部門長佐藤さん(仮名)の悩みは厳しい業務環境の中で、業務効率が低下していることでした。そして、メンバーのやる気(モチベーション)が低下していることも気がかりでした。不良製品が顧客に渡ることさえ発生するようになったのです。

職場内でのコミュニケーションが大切だと考えた佐藤さんは毎週部門メンバー全員を集めたミーティングを開催しました。佐藤さんから部門の方針を説明しますし、メンバーから発言はありますが、それが何か新しいアクションにつながることはありませんでした。毎回、予定調和のように「私たちの仕事は大切な仕事だ」「これからも協力して頑張ろう」と言う結論が出るだけなのです。そして、いつの間にか他部門の人からは「品質保証部門は使えない人たちの集まり」とか「技術者として失格」、「出来るだけ関わりたくない」と陰口を言われるようになってしまったのです。

そこで、佐藤さんと私で部門のキーパーソンと個別に対話をするようになりました。すると、キーパーソンたちは自分たちの置かれている状況や会社が顧客からどのように見られているかについて理解できていないことが分かったのです。顧客に渡る製品の品質に責任があると考えず、設計・製造部門から渡された製品の品質確認が自分たちの仕事だと考えている人もいました(毎日の忙しさの中で、目先の仕事のことしか注目しなくなってしまったのです)。そして、出荷直前の最終工程でこれ以上の品質向上は難しいことが分かりました。

そこでベテラン・中堅中心のキーパーソンに集まってもらい、「顧客から会社がどのように見られているか?」「他部門から見て品質保証部門はどの程度期待されているのか?」を話し合い、自分たちがなりたい姿(ビジョン)を作り上げました。そして、そのなりたい姿(ビジョン)を実現するための1.5年計画(18ヶ月計画)を作ったのです。そして、3ヶ月ごとの中間目標も作成してそれをキーパーソン中心に実行することにしました。佐藤さんからキーパーソンに権限を委譲し、キーパーソン主導で計画を実行したのです。結果的には、約2年後(24ヶ月後)に目標を達成することができました。

職場のコミュニケーションは重要です。ただ、自分たちが置かれている状態・環境をしっかりと理解していなければ話し合っても独りよがりな結論になってしまいます。メンバー全員が自分たちの立ち位置を理解した上で、新しい気づきをもとにして目標を作ることで職場の雰囲気・人間関係・考え方が変わるのです。そして、個人も職場(組織)も成長します。

自分と他者との関係をしっかりと認識することで成長がはじまります。

うつみ まさき

コーポレート・コーチ

(株)イノベーション・ラボラトリ