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ソニー自由闊達復活のマスター・キー(社長復活)【イノベーション、感動、組織再生】

2018年2月2日にソニーの社長交代がニュースとなりました。(https://www.jiji.com/jc/article?k=2018020201275&g=eco)
2012年から社長を務めた平井一夫さんから、吉田憲一郎さんへ社長が交代するのです。

平井さんが社長に就任した2012年3月期に、ソニーは過去最大の連結純損失4566億円を出しました。
まさに危機的状態からのスタートでした。

2018年3月期にソニーは営業利益7200億円を見込んでいます。
一時、ソニーOBからも批判を浴びた平井さんですが、この数字を見る限り今期のソニーは再生を印象づけます。

CBS・ソニー(後のソニー・ミュージックエンタテインメント)入社の平井さんですが、ソニーの技術者や若手社員の心を掴んだとの報道もありました。(http://news.livedoor.com/article/detail/14261266/)

会見での「好業績を収めつつあり、社内外に元気なソニーをアピールできている今こそ 新社長にバトンを渡すのが最適なタイミングと考えた」は本音ではないでしょうか。

一方、4月からソニーの新社長となる吉田さんは、平井さんとともに構造改革と人員削減(約1万5000人を削減)を進めて来た人物です。 
技術者ではなく、財務部門の出身者です。
平井路線を継承することが予想されています。

吉田さんの「時価総額がすべてではないが、現在時価総額の上位を占めるのはテクノロジーの会社だ。 ソニーもテクノロジーの会社である以上、危機感は抱いている」との発言が具体的にどのようなマネジメントに結びつくのかは注目に値します。

ところで、ソニーグループはデジタルコンシューマー製品や半導体だけではなく、PlayStation4、映画・音楽分野、金融業など多方面に渡るビジネスを展開しています。
連結子会社は1292社あり、その数は現在日本一です。(http://toyokeizai.net/articles/-/204910)

社長交代を伝える時事通信社の記事では「「らしさ」回復が課題」と書かれていますが、ソニーらしさとは何を意味するのでしょうか?
これからのソニーグループはどうなっていくのでしょうか?

吉田さんは「感動を提供する会社として、これまでとB to Cに対する考え方は変わらない」と述べていますが、ソニー創業時の市場とは異なります。
「感動を提供する」ことの難しさはソニーが手がける商品群を見ても分かります。

2018年度のB to Cビジネスに関しては為替効果も存在したと言われていますが、そもそもデジタルコンシューマービジネスではヒット商品を出し続けることが運命づけられています。
トップとして適切な目利きが出来るかどうかは極めて重要です。

これほど巨大なソニーのビジネスで、どうすればそれが可能となるでしょうか?

ところで、革新的(Innovative)な会社には強い個性があります。
創業時のソニーを特徴付ける言葉は「自由闊達」です。

それがソニーの強みに結びついたのです。

有名なソニーの「設立趣意書」では、会社設立の目的として

「一、 真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」

と述べられています。(https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html)
 
しかし、数々の問題を抱えてきた現在のソニーに自由闊達な文化が存在するかどうかは「外からは分かりません」。  各種報道から推察すると、企業文化・価値観に傷がついているかもしれません。

そもそも、日本を代表する大企業の中に自由闊達の社風を持つ会社は何社存在するでしょうか?

あくまでも一般論ですが、会社組織は規模が大きくなると保守化します。
また、強烈なトップダウン型マネジメントに陥る会社も珍しくありません。
そして、適切にリスクを取ることが出来なくなります。
(中には、突如「一か八かに走る」組織もあります。)

保守化した多くの会社で行われる会議での議論を拝見すると、そもそも「相手の発言をしっかりと聞いていません」。

紳士的な雰囲気の会議であっても、相手の意見を聞いているポーズを示しながら
 ・相手の意見を自分の価値観で評価し
 ・時には、常に反論を考え
 ・時には、会議内容とは無関係なことに思いを巡らしています
形骸化した話し合いに他なりません。

このような現象を心理学では「マインド・ワンダリング」と呼びます。 
また、組織変革を研究するマサチューセッツ工科大学オットー・シャーマーは「ダウンローディング状態」と呼び、新しい発見・変革が起こらない状態と説明しました

結果的に、議論は協調よりは対立(勝ち・負けを決める)や妥協(意見を足して二で割る)の場になります。
そして、その会議では最良でも「現状の単なる延長線上にある答え」を出す場になります。
当然、新しい感動を見つけることができません

しかも、この現象は無意識現象です。
当事者は弊害に気がつくことができません。

いつの間にか、話し合いの場で「相手を軽視するようになり」、「ウチでは何を言ってもダメだ」と諦めモード(閉塞感)が漂うようになります。

感動は新しい共感から生まれます。
「パパ向け父親学級(両親学級)」に参加することで男性が育児に対する新しい理解・体験を手に入れるように、相手の立場や現実を知ることではじめて閉塞感が打破できます。

「育児は大変だよね」と知識(理屈)だけを知っていても容易に発見には結びつかないのです。
(自分の価値観が変化しないからです)

ソニーが現在以上に多くの感動を提供するためには、組織の中に共感の機会を作ることは極めて生産的でしょう。
それは意図しなければ実現できません。
そして、それはソニーに限らず多くの組織に共通する変革のマスターキーです

ソニーをはじめとする多くの会社・組織が新しい価値を提供し、社会に貢献することを心から期待しています。

うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
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