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川崎重工の製造品質問題から「働く場」を考える
【リーダーシップ、個人の問題、システム思考、改善活動、コーチング】

チーム・職場のリーダーにとって、メンバーが力を発揮できる場をつくることは大切な仕事です。
職場で問題が起きた時に「犯人捜し」をして、その人に責任をなすりつけてもほとんどの問題は解決しません。

2017年12月11日に発生した新幹線「のぞみ34号」の台車亀裂トラブルに関して、
2018年2月28日にJR西日本(西日本旅客鉄道)と問題車両を製造した川崎重工業が記者会見を開きました。(https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201802/0011027497.shtml)

記者会見で両社から、
  のぞみ34号で亀裂のあった台車の外枠を
  川崎重工が製造した際に、
  設計上の寸法より底面を薄く削っていた
と発表しました。
別の部品と適切に溶接できなくなり、削って対応したのです。

台車枠は、車両が走行する際に重要な部分です。
もし例外的処置としてそれを削る場合には、溶接部分の周辺については0.5mmまでの範囲とするとの業界基準があります。
しかし、製造現場の班長の指示のもと担当者は底面を最大で3.3mmも削ってしまったのです。
また、班長は底面の品質確認をしなかったとのことです。
自分たちの作業内容について、十分に理解できていなかった結果であると発表されました。

実は、「のぞみ34号」で亀裂が発生した原因は分かっていません。
ただ、薄い底面のため亀裂が早く広がった可能性があります。

今回の作業について、記者会見では
 作業者全員が、規定を外れたことをしているという認識がなく、
 通常作業という認識だった
と説明しています。

そして、川崎重工の金花芳則社長、小河原常務は
  班長の思い違いで、作業者に間違った指示を出した。
  加工不良という認識がないので、(不良品の)情報は上に伝わっていなかった。
  基本的な教育が欠如していた。
と説明しています。

川崎重工では「品質管理委員会」を設立し、再発防止を検討するとのことです。

金花芳則社長をはじめとする経営幹部は、
 ・自分たちが現場にいた頃と違い、技術者・技能者のレベルが低いから
  問題が発生した
 ・自分たちは損な役回りをしている
と考えている訳ではないでしょう。

社内組織を変更し、教育や監査を強化するだけで現場に責任を押しつけても、本質的な問題は解決しません。

記者会見では、「工場に出て困りごとを聞くなど、現場と経営陣の距離を縮める努力をしてきた」と語ったとのことです。
ただ「エライ人」がやって来ても、現場の人たちが「困りごと」を相談することは極めて難しいでしょう。
 一般論として、管理職は良い部分だけを幹部に見せたがります。
 そして、幹部もそれを無意識に歓迎するかもしれません。

ところで、新幹線の車両数は2016年度末時点の段階で
  JR北海道が40両、JR東日本が1370両、JR東海が2128両、
  JR西日本が1123両、JR九州が142両
で計4803両です。
新幹線の車両は十数年程度で新型車両に置き換えます。(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180312-00211939-toyo-bus_all&p=3)

車両の量産化がはじまったとしても、テレビや携帯電話のように大量生産されるものではありません。
新幹線の設計・製造費が高額であると言っても、機械化や自動化には限界があります。

ですから、作業の標準化を進めようとしても車両や電機部品の設計・製造は技術者や技能者個人の力量に大きく依存します。
 「日立製作所」「日本車輌製造」「川崎重工」で作り方は大きく異なります。
 車両製造は、特注品独特の問題を多く抱えています。

このように個人に依存したものづくり環境の中で、短納期化やコスト低減の要求は厳しく、それは現場を直撃します。

ものづくりの条件は年々厳しくなっているでしょう。

車両メーカーの品質保証部門や鉄道会社の試験で、正常系/異常系の機能試験/非機能試験を全て実施することはできません。
 そんなことをすれば、コストや納期を守ることができません。

だからこそ、「現場の力」が非常に重要なのです。

しかし、現場では派遣社員が増え、外注化が進んでいます。
技術・技能の共有化や移転は容易ではありません。

つまり、ものづくりの「場」が崩れてしまったのです

現場で人の孤立化が進めば、担当者の視野は狭くなります。
 意識している責任範囲は狭くなりがちです。
 情報の共有もますます難しくなるでしょう。

現場に「場」がないため、経営層からの「ムリ・ムダ」に抵抗することもできないでしょう。
この20~30年の間に、多くの企業で現場が衰退するのは当然です。

それでは、これから現場ではどうすれば良いのでしょうか?

もちろん、経営者・管理職の問題意識はとても重要です。
 現場に責任を丸投げされれば、問題はなかなか解決できません。

目的意識も必要です。

 ビジョンがあれば、人はモチベーションを高めることができます。

その上で、たとえばあなたが現場のリーダーならば職場に「安心できる場」「信頼できる場」を作ってみてはいかがでしょうか?
 危ないこと、危険なこと、心配なことがあっても
 躊躇せずに相談できる環境があることで安心して仕事ができます。
 そして、
 ・自分たちのチーム抱える身近な問題は?
 ・トラブルになりやすいことは?
 ・先送りされやすいことは?
 などを共有するのです。

お互いに困っていること、悩んでいることを共有化(見える化)することができれば、チーム内で相手を配慮することができます。
 助け合うきっかけを作ることができるのです。

チームメンバーの孤立化を解決することができれば、チームの中で問題解決のために知恵を出し合うことが可能になります。
 仕事の問題を「個人の能力の問題」とせず、「仕事の仕組み(プロセス)の問題」と捉えることができた時に職場を良くするための方法が見えてきます。

仕事の仕組み(プロセス)を良くするために知恵を絞ることが、身近な問題だけではなく、大きな問題を改善するきっかけを作ります。

そのためにも、現場に「信頼できる場」を作る方法を考えることはリーダーのために大切なことなのです。
焦らず、少しずつでも目的意識を持って職場を良くしていきましょう。

うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
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