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反対す人の本当の気持ちは?

企業の業務システムを開発しようとすると機能仕様が決まらず、結果的にプロジェクトが炎上することは珍しくありません。私もそのような相談を数多く受けました。

ベンダーの担当SEや情報ステム部門SEが関係部門と調整しようとしますが、意見調整がなかなか進まないのです。

プロジェクト炎上の原因を担当SEが業務を知らないことだと言う意見も確かに耳にします。ただ、現在のITシステム化で企業は単なるペーパーレス化だけを求めている訳ではありません。業務プロセスを改善することが目的となっています。つまり、仕事の仕方を変えることが目的なのです。変化すること、逆に現場の立場では仕事の仕方を変えられることに抵抗感があるのです。

話し合いがこじれた時の対応は難しいものです。いつの間にか「反対することが目的」で反対する関係者も出てきます。結果的にシステムが活用されず、ムダな投資となってしまう場合もあるのです。

ここで重要なことは「表明されている反対理由は必ずしも本当の理由とは限らない」ことです。

本当の理由が潜在化してしまうのです。

結果的に、反対理由に対処しても別の新しい反対理由が登場して意見調整が進まないのです。

話を分かりやすくするために、個人の例で考えましょう。

このような「本当の理由が分からなくなってしまう現象」は個人の習慣を変える場合にもよく見られます。

「衝動買いがやめられない」「ギャンブルがやめられない」「ビックマウスがやめられない」などの背景には必ず理由(=満たしたい欲求)があります。この満たしたい欲求を顕在化し、代替案を作り、その代替案を実行しなければフラストレーションがコントロールできないのです。

例えば、衝動買いによって「自分が世界を支配する感覚(他人を服従させる感覚)」に喜びを感じているのかもしれません。なぜ「支配したい」のかと言えば、他者との関わりが希薄であり、自己効用感が持てないのかもしれません。仮にそうであるならば、自己効用感を感じられるような短期的な目標や中長期的な目標を設定して日常習慣を変える試みが大切になります。

自分が本当に大切にしたい感情を自覚している人は案外少ないものです。多くの人は反射的に意志決定・行動してしまうので、内省することがないのです。

表面的なインタビューだけでは職場の現実を見ることは難しいものです。また、自分の望みも見えてきません。

コミュニケーション、対話、コーチングによって「本当の気持ち」を共有する力があります。対話こそ問題を解決する鍵となるのです。

 

うつみ まさき

コーポレート・コーチ

(株)イノベーション・ラボラトリ