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会社・組織のリーダーシップ:あなたの会社が生き残るには?

 

今(2017年)から20年以上前のことですが、私は技術者として活動していました。その頃、私はある大企業A社のマネージャー瀧澤さん(仮名)と仕事をするご縁を頂きました。瀧澤さんは一流国立大学を卒業し、会社では出世頭であると聞かされていました。瀧澤さんは大変に合理的な考え方をする方でしたが、私には意外なことを仰っていました。「部下の社員教育には関心がないし、育成にも興味はない。必要なのは即戦力なのだ。会社に入った後で会社の金で勉強させるなんて信じられない」と。まだ若かった私は「頭の良い人の考えることは違うな。これからはそんな時代になるのかしら」と思ったものでした。その後、瀧澤さんは幹部・上司にも気に入られ、A社の経営幹部となったのです。

ところで、瀧澤さんが昇格した後にその部門はどうなって行ったでしょうか? 実は大きな品質問題を繰り返し発生し、大切な顧客の信頼を損ねてしまいました。 優秀な従業員の多くは「条件の良い会社」に転職してしまったのです。  後に残されたマネージャーやリーダーたちは顧客からの信頼を回復させるために大変な努力をしたと聞きますが、一度失った信頼を回復されることはできなかったようです。そして、予算未達の責任は後に残ったマネージャーたちが取ることになりました。会社の人事管理システムはその期の予算達成度合いや利益などの会計システム上の評価で成績評価をしていたからです。 また、A社は現在事業継続の危機に見舞われているそうです。
私には、当然の結果のように思えます。


会社の経営指標として「顧客満足度」や「従業員満足度」を謳う会社は珍しくありません。
しかし、顧客満足度に大きな影響を及ぼす従業員の人材育成に大きな関心を持っていない会社も珍しくありません。 ある程度の給与と福利厚生を保障すれば従業員が満足する、そして会社のために努力すると考えているのかもしれません。  経営幹部やマネージャーたちは、自分が必死に努力したのだから従業員も努力しなければならないと思っているのかもしれません。 しかし、それで従業員は会社に対する帰属意識を持つでしょうか? 仮に大企業であれば就職を希望する人は集まるのかもしれませんが、従業員を代替可能な部品と同じように考えていては従業員が会社の幹部を信頼することはないでしょう。 たとえば製造業の場合、短期的な観点でのコスト安を理由に海外に生産拠点を移し、中長期的な経営計画を作ることができない会社も存在するようです。危機を認識することができないような老化した組織となってしまったのだと思います。動脈硬化から生命の危機に至る病となるのは当然のことだと思います。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
市場環境の変化が大きいから? 競争相手のコスト競争力が強いから? 技術進歩についていけないから?
もちろんそれらも大きな要因だと思います。しかし、私は「経営者やマネージャーなどのリーダーが会社の存在意義や社会的使命よりも自分の自己実現・目標達成を優先した結果」だと考えています。リーダーが目先の問題解決ばかりに関心を持ってしまったのです。リーダーは目の前の問題解決と同時に中長期的視点を持つことが必要なのです。バランス感覚を持つことは必須です。 従業員たちから上がってくる現場のリアルな現実に対処する感度を持ち、優先度の設定を正しく行うことで自身が変化を作ることができるのです。


現在は厳しい競争がグローバルに行われています。意志決定することは大変に難しい時代です。多くの会社・組織にとって、単純な過去からの延長線上の目標を設定は自滅を意味します。
リーダーが組織に対する責任を認識し、常に変革を目指す意志こそが会社・組織と従業員の未来を創り上げる基盤であるのです。

うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
https://innovation-labo.com/