私は今までコンサルタントやコーポレートコーチとして多くの会社・組織の業務改善活動や品質向上運動、そして新規性の高いプロジェクトの支援を担当しました。それは、「今までのやり方だけでは生き残ることができない」と考えている会社・組織が多いからだと思います。つまり多くのプロジェクトは失敗し、多くの改善活動が成果を出すことが出来ないのです。
業務改善活動にアサインされた人たちの中には頭を抱えてしまう人も多いのが現実です。特にベテランメンバーは「失敗体験」を数多く持っています。 多くの組織では「これが正しいやり方です」と保証されたことを実行することが「正しいやり方」であると教育しています。ところが、組織やプロジェクトの改善活動には正しいやり方が存在するとは限りません。1990年代まではベストプラクティスやベンチマークが盛んに宣伝されていましたし、今でも重要な考え方であることは間違いありません。しかし、他社の成功事例を真似しても失敗する事例は珍しくありません。つまり、多くの場合に模範解答が見つからないのです。
問題意識を持った人は「今のままではダメだ」と考えます。ただ、今のままではダメだと思ったとしても何をどのように変えると良いのかがハッキリとしない。また、自分の考えを力説しても周囲の人たちが協力してくれない場合も多いことでしょう。そんな状態が続いて、問題意識がある人は職場から去って行く光景は淋しいものです。そんなことを繰り返しているうちに、職場を良くすることは自分とは関係のないことだと思うようになっていきます。自分は自分の仕事をするだけで精一杯だと思うようになるのです。
ちなみに、最近の改善活動は本社部門からトップダウンで指示されることが増えています。そんな時は、「目標やビジョン」が本社のスタッフ部門から示されます。しかし、現場の営業部門や設計・製造部門で働いているとその「目標やビジョン」がピンと来ない、つまり腑に落ちないことも多いものです。そんな時は、「本社の人たちは現場が分かっていない」と同僚で愚痴をこぼすことになります。
もっと別にやらなくてはならないことが山のようにあるのに。。。
現場で繰り返し耳にする台詞です。改善活動、つまり変化には手間がかかるのです。コストが必要なのです。それがなかなか理解されません。
変化を強制されるので、自分たちが大切に思っているものが壊されてしまう不安感も沸いてきます。まるで自分たちが否定されているような気がしてくるのです。
納得感なく変化を強制されることは嫌なものです。 たばこが身体に悪いと分かっていても、禁煙を強制されると必死に「自分は大丈夫」と繰り返し言い訳を言いたくなる姿を思い出します。
ですから、「教育」や「研修」、「トレーニング」などもよほど上手に実施しなければ現場は変わりません。(受講者アンケートで高評価であったとしても効果が出るとは限らないのです)
なぜ、そうなるのでしょうか?
「人は目の前で起きていること、そして分かっていること(認知されていること)」しか人は見ることができません。これは、認知的不協和とか、認知的盲点などと呼ばれる現象です。システム(自分たちを取り巻く環境)の全体像を理解することは容易ではありません。また、「自分の信じていること」や「関心があること」以外は物理的に見えていても認知されることはないのです。テレビCMで洗濯機の宣伝をしていても、洗濯機を買いたいと思わない人はCMを見てくれません。
「何に関心を持ち、何を目標とするか、
そしてそれはなぜ自分のゴールとしてふさわしいのか?」
そんな「当たり前のこと」を明確化できない現実が職場の閉塞感を作っています。
コーポレートコーチ
うつみ まさき