とても簡単なマインド・コントロールの方法は?
カルト宗教が社会的な問題を起こしたこともあり「マインド・コントロール」と言う表現を時々目にするようになりました。
マインド・コントロールや洗脳と言う単語はとても強いインパクトがあります。 そして、「薬物」や「電気ショック」などで強制的に人の心を変えてしまう姿をイメージします。しかし、そんな恐ろしい手段を用いなくてもマインド・コントロールは可能なのです。
以前、ある会社に勤めていた技術者の田中さん(仮名)は能力開発を目的とする自己啓発セミナーに参加しました。セミナーの参加には高額な費用が必要だったのですが、私が「なぜ、参加する気になったのですか?」と伺ったところ
その自己啓発セミナーを紹介するホームページには
多くの参加者が感謝の言葉を書き込んでいて、
それで参加する気になった
とのことでした。既に何回かそのセミナーに参加している田中さんは、完全にセミナー主催者を信じ切っているようです。そして、それほど親しい訳でもない私もセミナーへ参加しませんかと誘われました。 私は田中さんと親しいわけではありません。ただ、私はその話を聞いて「典型的なマインド・コントロール技術だ」と感じました。一度かかったマインド・コントロールを解除することは容易ではありません。マインド・コントロールはそれほど恐ろしいものなのです。
そもそも、セミナーへの勧誘を目的としたホームページに「セミナーに対する否定的な意見」などが掲載されるはずはありません。また、セミナー勧誘を目的とした「無料紹介セミナー」などでは「いかに素晴らしいか」を繰り返し説明されますし、そこに主催者側のサクラなどを紛れ込ませて「感動的な感想」を話してもらえば肯定的な雰囲気を作ることは比較的容易です。感動的な話は「フェイク」かもしれないのです。
マインド・コントロールの基本は「情報を隠す」ことです。
情報をすり込む前に、隠すのです。
情報が隠された場合には、(マインド・コントロールされる側の人が)問題点の存在そのものに気がつく可能性が極めて低くなります。そして、集団の中の同調圧力によって特定の考え方が「当たり前」になって行くのです。
この情報を隠す、遮断すると言う方法はカルト団体だけではなく多くの組織の中で今でも良く使われています。
例えば、一流企業がコンプライアンスに違反したことが表沙汰になり大きな社会問題になることがあります。なぜ一流企業の有能なビジネスパーソンがそのような犯罪行為に手を染めるのでしょうか? ひとつの理由は、その企業が長期間にわたり従業員をマインド・コントロールしているからです。その企業の中だけで通用する「常識」「社風」が従業員をマインド・コントロールするのです。企業が行う表向きの「従業員教育」とは別に「職場の文化」「昔からそうやっている」「周りの人もそうやっている」と言う現実がビジネスパーソンにマインド・コントロールを仕掛けます。そして、所謂過去の成功法則もマインド・コントロールの可能性があります。悪意はなかったとしても、時代に合わなくなれば成功法則にはならないのです。 マインド・コントロールの結果、心身の健康を害するまで仕事をし、法律・法令違反となるような行為に手を染める事件が繰り返されています。 本人たちは、それを正しい行いと信じているのかもしれません。
企業の中だけではなく、社会の中にもマインド・コントロールが存在する可能性は十分にあります。
ひとりひとりがしっかりと情報を集め、自分の力で意志決定することがこれからの流動的な世の中では重要であることを忘れてはなりません。それがマインド・コントロールから逃れる唯一の手段です。
うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ