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会社の人材育成:従業員教育はムダなコストと諦めているあなたへ

 

最近の大きなトレンドは「人づくり」です。新聞やテレビなどのマスメディアでも「人づくり革命」なるものを解説することが増えています。

その背景には、「組織の生産性を向上させるためには優れた人材が必要であること(日本では会社・組織の生産性を向上させることが生き残りのための至上命題になっている)」、「平均寿命が延び、50代からの人生再設計が社会の要請であること」などがあるでしょう。

一方で、会社での人材育成教育(管理職教育、リーダー教育、他)は必ずしも活性化していると限りません。先日も社内で講師を育成し、リーダー育成教育を行っていた人事担当者が「リーダー教育が中止になった」と嘆いていました。経営幹部が定量的な効果が見えないので中止を判断したそうなのです(教育がムダなコストに見えたのでしょう)。人事担当者は大変に悔しがっていました。なぜならば過去の受講者たちが成長し、より積極的に仕事に取り組むようになった姿を見ていたからです。

多くの会社では目に見える結果指標(売り上げ、利益、シェアなど)を短期間に出すことが求められています。従業員教育も結果指標に貢献することが求められる傾向があります。コンプライアンス関係等で実施することが義務化される教育や最低限の業務知識教育などは「せざるを得ない」ため何らかの形で教育が実施されますが、そうではないものはムダなコストと見なされて削減される傾向があります。

結果的に会社は即戦力の人材を求めますが、最近ではそのような人材を獲得することはますます難しくなっています(人手不足、人材難)。そもそも、キャリア採用などで入社した優秀な人材はより良い条件の会社が見つかれば転職します。ある会社ではキャリア採用した人材は3年で約70%が会社を去りました。また、社員教育が充実していない会社では新卒者も退職しやすい傾向があります。しっかりと対策を取らなければ、今職場で働いている人たちの負担が増加し、疲弊し、そして退職してしまう悪循環を止めることができません。

ところで、人材教育に短期的な結果指標向上などを求めること考えには偏りがあります。結果指標は多くのパラメーターによって動いています。例えば、製品競争力、顧客ニーズ、顧客予算、競合、品質、人間力・人間関係など様々です。よって、特定のパラメーターのみを操作して結果指標を向上させることは出来ません。総合力が必要です。逆に定量的に結果指標向上を計画する場合には、結果指標に大きく影響するプロセス(過程)を明確化することが重要です。結果指標を向上させたいので、その過程がどのように変動しているかを表すどのプロセス指標を向上させることを目標とするかを決め、そのための戦略を作成します。有能なマネージャーやキーパーソンは経験的・直感的にこの結果指標とプロセス指標の関係に仮説を持っていて、それを動き確認している場合が多いのです(仮説が正しいとは限りませんので検証が必要です)。このような結果指標とプロセス指標の関係は人事部門と事業部門が協力しなければ作成することはできません。そして、測定と検証・評価には手間(コスト)がかかることは認識するべきでしょう。従業員教育は人事・人材開発部門だけでは効果を出すことができないのです。

なお、しっかとりマネジメントが出来ている上司であれば教育受講者の表情や行動の変化から教育効果は認知しているはずです。そして教育受講後には高いモチベーションがあったにも関わらず、いつの間にか「元に戻ってしまう」ようであれば教育内容だけではなく、組織(部門)の行動基準・優先度に課題があると考える材料になるはずです。

会社にとって「従業員はコストではなく資産である」としっかりと理解することが現在のトレンドです。利益と生産性向上は従業員に依存しているのです。

うつみ まさき

コーポレート・コーチ

(株)イノベーション・ラボラトリ

https://innovation-labo.com/