リーダシップとリアリティ:あなたがリーダーとして成長・成功するために
組織・プロジェクトは精神論だけでは成長・成功しません。
ただ、それは組織・プロジェクトのステークホルダー(利害関係者)のマインドセット(考え方)やコミットメント(責任を持つ約束)が成果と無関係であることと同じではありません。特に、リーダーのマインドセットやコミットメントはとても重要です。
これは、ある大きなシステム開発プロジェクトが大炎上した際のお話です。
あるカンパニーで大変に大きなプロジェクトが致命的な納期遅れを発生させ、赤字を出していました。カンパニーに事業基盤に影響するほど大きな赤字です。プロジェクトは前進せず、また事業上の理由から中止させることも出来ず、デッドロックに入ってしまいました。
経営幹部は次々と技術者を投入しましたが、プロジェクトの混乱は一層大きくなるばかりでした。部門外からも応援部隊が投入されましたがプロジェクトの進捗が改善される兆候がありません。ちょうど砂場に水を蒔いているように、努力した効果が「どこかに消えてなくなってしまう」毎日でした。多くのマネージャー、技術リーダーは疲れ切っていました。そして、私のところに応援部隊のマネージャーが相談にやって来たのです。
何名かのプロジェクト関係者の話を聞き、大炎上の原因は技術的な問題だけではなくプロジェクトマネジメントの問題であると分かりました。 実は、プロジェクト関係者はプロジェクトマネジメントの問題点に気がついていたのですが、それを是正することに躊躇していたのです。マネジメントの問題を改善するためには多くの関係者(特に、経営幹部を含むマネジメント層)の意見調整が必要だからです。関係するリーダー技術者たちにとって人間関係やコミュニケーション、運営などのマネジメントは最も避けたい問題だったのです。
このプロジェクトに関わっているリーダー技術者たちは整然とマネジメントされたプロジェクトを経験したことがありませんでした。(常にプロジェクトは炎上し、それを人海戦術と長時間労働で乗り切ってきたのです。) 教科書でプロジェクトマネジメントの方法論を学ぶことはあっても、それが現実に実行されるイメージを持つことができません。最初から諦めていたのです。
幹部たちともお話をして、実質的なプロジェクトマネージャーとして野沢さん(仮名)にプロジェクトへ参加してもらいました。野沢さんは若く、担当する事業領域の知識はありませんでした。大きな規模のプロジェクトをマネジメントした経験もありませんでした。ただ、プロジェクトマネジメント技術については精通していましたし、技術的に困難な多くのプロジェクトを成功させた経験がありました。 私はマネジメント技術の支援よりは野沢さんへのマインド・コーチングを積極的に行いました。野沢さんの過去の経験などを参照しながらプロジェクトが清清と進行するイメージにリアリティ(臨場感)を持てるようなサポートをしました。 プロジェクトが成功する「結果」ではなく、日々のプロセスが正しく行われることにリアリティを持つことができるお手伝いをしたのです。そうすることによって今まで見えてこなかった「やるべきこと」が明らかになって行きました。 野沢さんのリアリティは次第にプロジェクト内に浸透していきました。情熱も拡散していきました。野沢さんが語る言葉・表現や行動が変わり、周囲を巻き込んだのです。 最終的に、多くの問題点をなんとか克服し、野沢さんたちはそのプロジェクトを完了させることができました。
書籍を読み、教室などで学ぶことで知識を持つことは重要です。その上で、リーダーは知識や手法、そして原理原則にリアリティを持つことが会社・プロジェクトを成功に導きます。リアリティを持つことで見えていないものが見えてきます(可視化)。 テレビを買うこと真剣に考えるとテレビのCMに気がつきやすくなるのと似ています。その結果、リーダーはステークホルダー(利害関係者)に影響を及ぼすことができるようになります。 リアリティはイメージする力と相関します。梅干しを見るとつばが出来ように、意識的な努力以外の力が発揮されます。そして、「成功のイメージ」を支えるものは知識だけではなくマインドセットです。梅干しがすっぱいと知識で知っているだけでは身体は反応しません。その意味でリーダーリップの源泉はマインドセットです。
マインドセットを成長させる環境を意識的に作りましょう。自分がどのようなマインドセットを持っているのかは自分だけで知ることは難しいものです。そして、自分だけでマインドセットを成長させることはより難しいものです。環境を作ることでリーダーマインドを成長させるのです。マインドセット(意識)を変える決心が会社・組織・プロジェクトを成功・成長させるためのスタートラインです。
うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
https://innovation-labo.com/