リーダーシップ:あなたの会社の救世主はどこにいるのか?
いつの時代も会社・組織は優秀な人材をほしがっています。
先日も、あるカンパニーの経営幹部石黒さん(仮名)から人材についての相談を受けました。優秀な人材がいないため、いつまで経っても自分が顧客と話をしなくてはならないと言うのです。特に何かの問題が発生すると顧客から「石黒を出せ」「石黒は何をしている」と言われてしまうそうなのです。確かに、石黒さんが会社を離れた時のことを考えると大変に心配です。
私が経営幹部とお話をした際に「優秀な人が集まらない」は決まり文句のように耳にする言葉です。 それと同時に、管理職に向けては「ウチの連中は勉強不足だ」「向上心が足りない」とお話をされます。そのような会社・組織では多くの管理職の方々が中堅・若手メンバーに対して「指示待ちタイプ」「自分の頭で考えない」と感じています。(そして、経営幹部の方々に対しても不満を持っていらっしゃるようです)
「どうすれば優秀な人材が採用できるか?育成できるか?」はいつの時代も普遍的なテーマなのでしょう。優秀な人材、そしてリーダーは多くの会社・組織にとって救世主なのかもしれません。救世主が「どこからか遠くからやってきてくれる」と良いのですが、それが実現する姿を私は見たことがありません。
「優秀な人材」「リーダー」について、少し違う観点から考えてみたいと思います。
最近、所謂「一流企業」でコンプライアンス違反が大きな社会問題に発展したニュースを何件も目にします。それと同時に○○ハラスメントのような誤った言動が従業員を追い詰める事件も後を絶ちません。これらの問題は昔から存在していたのですが、最近ではより深刻な現れ方をしているようです。なぜ、より深刻化しているのでしょうか?
要因は複雑ですが、ひとつ言えることは「組織が人材を育成する力を失っている」と言う事実です。
コンプライアンス問題や○○ハラスメント問題を発生させないために社員教育を実施している会社・組織は珍しくありません。社員教育の形式は教室での講義タイプもあれば、eラーニングタイプもありますが、必ずしも効果的ではないようです。それは、道徳(モラル)や倫理は明示的・むき出しで教育・説明しても定着させることが難しいからです。ですから、過去においては「従業員教育」だけではなく社風・組織文化に組み込まれる方式で組織メンバー・従業員に浸透させていたのです。ところが現在では社風・組織文化が希薄になっています。
社風・組織文化は会社・組織に対する信頼感をベースとしています。そのためにも、ある程度安定した組織構造・人のつながりが必要です。
一方で、市場の変化速度が大きいため多くの会社・組織では組織構造は不安定です。また、特定の目的達成を実現するためのプロジェクト形式の働き方も増えています。よって、会社・組織の中でメンバー・従業員はスタンドアローン化・孤立化が進んででいます。このような状態では多くの業務ノウハウや価値観の伝達・共有は実現できません。そして、組織に対する帰属意識も生まれませんので、社風・組織文化も希薄化するのです。
組織のリーダーは組織文化の中から産まれます。(組織文化を継承しないリーダーは、組織の価値観よりも自分自身の目標達成を優先してしまうでしょう。) プログラミングの知識や会計の知識に長けているだけでは組織と言う人間の集合体を導くことが出来ないのです。トヨタの文化は日産のそれとは違うでしょう。ソニーの文化はパナソニックの文化とは異なるのです。プロ経営者は短期でコストカットや株主利益などの実績を出すことができるかもしれませんが、中長期のビジョンを描くことが出来るとは限らないのです。文化と言う価値観・指針がなければ、コスト競争のみで戦うことになりかねません。
現在の市場環境に合わせた新しい組織文化の成熟・共有化、会社・組織と従業員・メンバーの信頼関係の作り方を構築するのです。それが組織のリーダー・救世主を誕生・育成させることになる近道です。
うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
https://innovation-labo.com/