リーダーシップコミュニケーション:あなたの夫婦の幸せとチームの成長は同じ
昔から意思疎通・コミュニケーションの問題は多くの人たちを悩ましていました。 そして、それを解決するテクニック(技術・手法)が常に求められています。結果的に、次々と関連書籍やセミナーが登場しています。
私もコロンビア大学の研究成果をベースとして開発された協調的交渉術講師(コンフリクトマネジメント)を担当した際、頻繁に「テクニックを教えてほしい」と依頼されました。
短期間で成果を求められる現代において、効果的なテクニックに期待することはもっともだと思います。
あるプロジェクトのマネジメント支援をコーチとして際のお話です。
ひとりの中堅クラスのチームリーダー武田さん(仮名)がコミュニケーションマネジメントの相談にやって来ました。
武田さんはチームメンバーとのコミュニケーションが上手にできない悩みを持っていました。 過去のチーム編成と異なり、現在のチームには若手の社員や外注さんも多く含まれていて、「言うことを聞いてもらえない」と言う悩みでした。 ひとりで仕事をすることが好きな武田さんは人とのコミュニケーションが最も苦手でした。だからこそ、上手なコミュニケーションテクニックが知りたいのです。 武田さんは職場のルール・業務規程があるのだから、それを説明し、それに従って伝達することで意思疎通が問題なく実現できると考えていたようです。
ちょうど政治家や芸能人の男女問題がワイドショーなどで話題になっていた時期でしたので、次のような流れで対話をしてみました。
・なぜ、不倫はいけないのでしょうか?
⇒パートナーや子どもに迷惑をかけるから?
⇒たとえばパートナーや子どもを経済的に支援すれば(養えば)問題はないのか?
⇒夫婦になるとはある種の契約だから、契約違反になるのではないか?
⇒契約すれば誰でもそれに気持ちよく従うことができるのか?
⇒夫婦がお互いに関係を大切に思い、
それを保つ努力をすることが契約の前提ではないか?
お互いに自分の要求を相手に一方的に伝えるだけで、夫婦関係は維持出来るか?
(家制度を守ることが当たり前の過去と現代は違うのでは?)
⇒相手を大切に思う気持ちがなければ、
それなりの対応しかできなくなるのではないか?
(形骸化)
⇒相手を大切に思う(尊重する)気持ちは、夫婦関係だけではなく
人間関係の基本ではないの?
⇒急いでプロジェクトの成果を求めた結果として、コミュニケーションの
プロセスが不十分だったのではないか?
(信頼関係や相手の状況把握、前提知識の共有などは十分であったのか?)
⇒相手が「自分は代替可能な部品のように扱われている」と思えば、
相手のモチベーションが上がらないのは当たり前
早く成果を求めるあまり、コミュニケーションのテクニックを使い相手を操作したい気持ちが強くなってしまう場合があるのは現在の会社・組織では仕方がないことかもしれません。 短期間で成果を要求されることはある意味「当然の行い」だからです。リーダーへのプレッシャーは極めて厳しいでしょう。しかし、お互いの「正義(正しいこと)」が同じとは限らない相手と信頼関係作りは必須です。信頼関係のない状態でコミュニケーションには苦痛が伴います。コミュニケーションスキルだけで苦痛を取り除くことにはムリがあるのです。それは内省的にコミュニケーションやその時の自分の心の動きをふり返ることで理解することが可能となります。内省的であることが大切です。 それは、「配慮」からはじまります。配慮のためには観察と想像力が必要です。リーダートップコミュニケーションの基本です。
(もしかすると、武田さんは過去に人とのコミュニケーションで傷ついたことがあるのかもしれません)
信頼関係のある環境からチームでのイノベーションが産まれます。生産的な話し合いが実現されます。
人間関係とは変化と成長のプロセスであると相互に確信できた際に大きくチームは発展します。チームは大きな成果を出す基盤が確立するのです。
自身が自律し、お互いに協調できる時に中長期的に継続できる大きな成果が手に入ります。そのために、リーダーは関係者と話し合いましょう。心静かな時間を持つことで、また周囲から支援によって内省をすることが学習と成長の道を開きます。
うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
https://innovation-labo.com/