儲け・品質とイノベーション(コーチング):挑戦できる人材が組織にイノベーションを起こす
最近、プロジェクトリーダーのレベルが下がっていると言う話を耳にします。
それは本当でしょうか?
そして、どうすれば優れたリーダーを育成できるのでしょうか?
ある製造業A社でのお話です。
大きなシステム開発プロジェクトがデスマーチ化していました。
納期から9ヶ月が経過したにも関わらず、全く完成の目処が立たないのです。
「社運をかけたプロジェクト」であったため、プロジェクトを中止するタイミングも逸してしまいました。
プロジェクトが混迷するきっかけを作ったのは明らかにプロジェクトリーダーのSさんでした。
プロジェクトの上流工程(初期段階)で既に大きな問題が発生していたのですが、経営幹部には「問題なし」との報告を続けていたのです。
上流工程で専門家の支援や方向性の修正などの対策を取っていれば、プロジェクトがここまでデスマーチ化することはありませんでした。
システムの試験工程で大問題が続出し、先行きが見えなくなると、Sさんは設計・製造の実働部隊である外注リーダーたちを毎週呼び集めて
どうするのだ!
どうしてくれるのだ!
と叫んでいました。
上流工程からプロジェクトの問題点を報告していた外注リーダーたちは黙ってSさんの叫びを聞くだけで、何も答えることはありませんでした。
最終的に、このプロジェクトはマネジメントとエンジニアリングの専門家を外部から投入し、大きな赤字を出しながら、納期から約2年遅れて終結しました。
そして、A社の経営を悪化させる結果になったのです。
たとえばものづくりのプロジェクトの場合、技術そのものが複雑化し、プロジェクトの難易度が上がっています。
当然、プロジェクトが失敗する確率は高くなるでしょう。
ただ、「リーダーのレベルが下がっている」とはそう言う事情だけが原因ではありません。
私はコーチとして色々なプロジェクトまたはプロジェクトリーダーのコーチングを行い、その過程で多くのリーダーが難関プロジェクトを成功させています。
一方、私の経験でもこの10年で
・メンバーの欠点ばかりが気になるリーダー
・メンバーの失敗を許容できないリーダー
・嫉妬深く、こだわりの強いリーダー
が目立つようになったのは確かです。
このようなリーダーは以前から多く存在していましたが、確かに最近はそのようなリーダーが「目立つ」のです。
これらのリーダーと対話をすると分かることは、彼らは「心の奥底では自分に自信がありません」。
小さな失敗も過剰に恐れています。
ある営業部門のマネージャーとお話をすると、「ウチの開発部門の人間は作りたいものを作っていて、売れるものを作っていない」と愚痴をこぼします。
売れるものを作れない原因を技術部門だけに押しつけることは良くないと思いますが、その会社の場合は「作りたいものを作っている」と言うよりは「作ることができるものを作っている」と言った方が正確でした。
「こんなもの作っても売れない」と分かっていても、リーダーたちは「挑戦して失敗した場合を想像すると怖くなる」のです。
「もしかすると、これは作れば売れるかも」と思っても新しいチャレンジができません。
新しい製品が生まれないのです。
誰も好んで失敗はしません。
ただ、現在の職場環境が
「失敗すると人生に傷がつく」と
リーダーに過剰な恐怖心を植え付けている
とするならば、全くもって非生産的です。
それでは日本の会社でイノベーションは起こりませんし、競合他社(特に、中国やインドなどの海外競合他社)に敗北してしまいます。
雇用を創り出すことも出来ないでしょう。
一部の天才を除き、「学ぶ」とは「失敗を次の機会に活かすこと」です。
だからこそ、早いタイミングで「小さな失敗」から上手に学習することが重要です。
過剰な恐怖心は、「減点主義」に洗脳された結果です。
その洗脳を解くことは、「売れるものを作る人」「変革時代のリーダー」を育てることです。
新しいことに挑戦できる人を育てるのです。
それは個人の能力や性格の問題だけではなく、上司の意識や組織制度などの「仕組み」の課題です。
多くの会社・組織ではマネージャーやメンターは人材育成の責任を持っています。
そのために、コーチングやファシリテーションなどのトレーニングも実施されています。
しかし、これらの技術が上手に活用される会社・職場はあまり多くないのかもしれません。
残念な失敗例を数多く耳にします。
それは、個人も会社・組織も「本当に変わる(進化する)」ことを恐れるからです。
しかし変化は必然であり、もはや避けることができないのです。
コーチングやファシリテーションなどの技術を積極的に活用することができれば、人は育ち(人材育成)、会社・組織は大きく変革します。
社会に貢献し、大きな利益を生み出します。
人も組織も学習することで変わります(成長します)。
本人も周囲の人たちも「人は大人になっても良い方向に変わる」と信じ、行動することから変革がはじまります。
希望を持って、正しい目標を設定しましょう。
うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
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