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リベラル・アーツと組織の成長力(ANAの西洋美術史研修から)
 【イノベーション、リーダーシップ、コンプライアンス、
 ロイヤリティ、コミュニケーション・コーチング】

数年前から一部の企業研修で「リベラル・アーツ」が流行しています。
 リベラル・アーツ(liberal arts)は直訳すれば「自由のための術(技術)」です。
 多くの場合、「教養」と訳されます。

リベラル・アーツを厳密に定義することは容易ではありませんが、ここでは「教養」と捉えて先に進みます。

私は組織リーダーとの対話(コーチング)の中で、ビジネスのみならず私生活・趣味などについての大切さを確認することがあります。孤独なリーダーのみなさんはいつの間にか目先の仕事で頭がいっぱいになっているのです。

そして、リベラル・アーツの重要さをお伝えする工夫をすることも珍しくありません。

なぜ、ビジネスに直結しないリベラル・アーツ(教養)を大切にするのでしょうか?

あるメーカーでは管理職向けに「古事記」・「日本書紀」を学ぶことができる講座を開講していました。

日頃、目の色を変えて「予算(営業ノルマ)」の数字を追いかけている管理職たちに「古事記」・「日本書紀」を学ぶ意欲があるのかどうかは分かりませんが、その会社では何かの目的があったのでしょう。

教養のある管理職を育成したいのかもしれません。 

高名なコンサルタントなどから「リベラル・アーツが大事」と言われた経営幹部に指示されて、苦肉の策かもしれません。

企業で研修をする場合には、企業として目指している人材像が存在します。

全日本空輸株式会社(ANA)でも、社員向けに西洋美術史研修を実施していると報道されています。(http://diamond.jp/articles/-/159960)
記事では、西洋美術史を学ぶことで

描かれた時代、描かれた事情、描いた人物という「背景」を知ることで、美術は「見るもの」ではなく、「読むもの」に昇華する。【歴史、社会を深く知る】
美術品は、つくられた時代の政治、宗教、哲学、風習、価値観などが形になったもの。それらを知らないなんて、自分たちの文明や歴史を知らないのと同義。
ひとりの人間として、世界中の人々とより深いコミュニケーションをとるためにも、ぜひ西洋美術史という教養を育んでいただきたいと思いますね
と 紹介されています。

リーダーシップの観点で考察することで、「リベラル・アーツの大切さ」は際立ちます

多くの企業で「コンプライアンス違反」がニュースになっています。 
また、企業・組織の中で従業員が個別化することにより企業・組織に対する一体感やロイヤリティが低下しています。

しかし、研修やeラーニングで「コンプライアンス遵守」「企業の社会的責任・使命」などを訴えても、その思いが従業員に届くとは限りません

従業員には、目の前に達成すべき数字を提示されています。
数字の魔力は強力です。
プレッシャーの中で「数字を達成できればそれで良い」と考えることが定常化します

コンプライアンス遵守や品質・社会的責任、ロイヤリティなどの意義は相対化され、建前・スローガンに貶められてしまうのです。
 重要な課題が「管理職からの薄っぺらな訓示」になってしまうのです。
 コンプライアンス違反を犯す大企業の下品な姿は、日本の地位低下を印象づけます。

実は、コンプライアンス遵守や品質・社会的責任、ロイヤリティはリーダーが語る物語(ストーリー)の中に埋め込まれることで人に伝わり、組織に定着化します。
 松下幸之助、井深大、盛田昭夫、市村清、佐々木正をはじめとして多くの名経営者はビジョンを「物語」として語っています。

 真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき

 自由闊達にして愉快なる理想工場の建設

で有名な東京通信工業(現ソニー)の設立趣意書は、まさに物語です。

ストーリーテリングには信念と同時に、経験教養が極めて大きな意味を持ちます。
定量的数値を羅列だけでは得られない共感は、経験や教養をベースとした物語によって実現されるのです。

もし、教養が組織にとっても共通言語となっていれば、共感する力は大変に大きなものになります。
現状を変革する力にもなるのです。

教養は企業・組織における「目先の目標達成」のものではありません。
教養あるリーダー・従業員の存在は、企業・組織が中長期的に成長するためのものなのです。

うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
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