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富士通の携帯撤退に見るイノベーションの障壁(会社の改善・改革コーチング)

最近(2018年1月26日)、富士通が携帯端末事業から撤退するとのニュースが流れました。
売却を巡り国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループとの交渉が最終段階に入ったと報道されています。(https://jp.reuters.com/article/fujitsu-polaris-idJPKBN1FF02O)

富士通は2017年8月に携帯電話事業を売却する方針を固めたとニュースになりました。
売却先として中国メーカーとの交渉も話題にもなりましたが、交渉は決裂したと思われます。

富士通は2010年度には東芝と事業統合を行い、携帯端末事業はビジネスの柱のひとつにすると表明していましたが(赤字にならなければ良いと)。 経営方針が変わった結果でしょう。
なお、2011年度に富士通は市場シェアが約18%であった言われています。(https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=138)

今後、富士通はIoT事業などに経営資源を集中させるのかもしれません。 成果はどうなるでしょうか。

もともと、富士通は旧電電公社に製品を納入する電電ファミリーの筆頭格です。
NTTドコモのiモードが全盛の時代には、富士通にとって携帯電話事業は花形でした。
ただ、フィーチャーフォン当時から端末開発は熾烈を極めたと言われています。
多くのデスマーチを経験した技術者が「想像を絶する開発現場」と私に語ったことがありました。

プロジェクトがデスマーチ化する理由は技術的要因だけではなく、商品戦略やプロジェクトマネジメントに課題があったからでしょう。

2001年には国内メーカー11社が存在した携帯端末ビジネスですが、日本メーカーは富士通を除くとソニー、シャープ、京セラの3社になります。

それでは、なぜ富士通をはじめとする日本メーカーは携帯端末事業で敗者となったのでしょうか?
(携帯端末事業のグローバルマーケットでは、アップル、サムスン、ファーウェイなどが勝者です。)
  ・Androidを使いこなすことが出来なかった
  ・日本でしか使えない周波数を総務省が割り当てた
  ・日本の人件費が高かった
などが話題になりますし、間違いなく大きな影響があったと思います。

しかし、もっとも大きな要因は
 ・顧客が通信業者(NTTドコモなどのキャリア)ではなく、世界の生活者であると発想の転換ができなかった
 ・そして、市場環境が変わったことが社内で理解されなかった
ことでしょう。

会社としての目標設定を完全に誤ったのです

携帯電話メーカーの中では2000年代初頭からスマートフォンの研究開発が存在しました。
エンジニアやマーケターの中には、スマートフォン時代の到来を大きな波を予測する人もいたはずです。

しかし、日本メーカーがスマートフォンビジネスを本格化したのは2011年頃からです。(アップルがアメリカでiPhoneを発売したのは2007年です。)

「これからスマートフォンの時代が来る」と繰り返し提案しても大きな開発費はつかず、市場への参入が遅れてしまいました。
会社での意志決定が適切に機能しなかったのです。(スマートフォン時代が来る前から)

それは、組織として適切な目標が設定できない老化体質となっていたことを意味します。

新しい商品では、機能やデザインはパイロット的に投入した商品の反応を見ながら決める必要がありますが、キャリアからの要求や自社の保有技術から商品企画をする習慣を変えることは容易ではありません。(特に、グローバル市場で戦う準備が出来ていませんでした。)

結果的に、挽回が不可能なほど海外メーカーに市場を奪われてしまいました。

日本の人件費はアジア各国と比較して高いと言われますが、人件費の高さにふさわしい創造性を発揮することができれば会社として不都合はありません。
創造性が発揮できない体質になったことがイノベーションを遠ざけています。
それは携帯端末事業に限りません

日本がこれからも先進国の一員として大きな利益を出すためには、創造性・つまり従業員の創意工夫が活きる組織を作ることが必須です。 目標設定と協調が必要です。

「形式的なフラット化」、「不適切な権限委譲」、「未熟な意志決定システム」を改善するマインドセット(考え方)が生き残りの鍵です。
技術や制度(業務プロセス)を使いこなすマインドセットのことを忘れていては、同じ失敗を繰り返すことでしょう。

逆に、成長と変革の鍵を手に入れることができれば、私たちの未来が大きく飛躍することは間違いありません。
私たちにはそれだけのファンタメンタルが存在するのです。

うつみ まさき

コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
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