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米GEの赤字1兆円に見るこれからのイノベーション【イノベーションとマインドセット・コーチング】

米GEの赤字が大きなニュースとなりました。(2018年1月25日)
2017年10~12月期決算が傘下の保険事業で損失処理を行った結果、最終(当期)損益が約1兆700億円の大幅赤字になったと報道されたのです。(https://mainichi.jp/articles/20180125/k00/00m/020/161000c?)

GEの歴史は、トーマス・エジソンが1878年に興したエジソン電気照明会社からはじまっています。 
約30万人の従業員を擁する世界最大級の複合企業です。
そして、世界の製造業を代表する会社です。

もともとは家電などのコンシューマ向けビジネスを手がけていましたが、現在は電力システムや航空機、医療機器、金融ビジネスで経済に大きな影響を与えています。

GEは日本ではイノベーションを実現する会社として紹介されることが多く、多くの経営者や経営コンサルタントが「理想の会社」と位置づけています。
たとえば、東芝の経営変革活動はGEのシックスシグマ活動に強く影響されていると言われています。

社風は風通しが良く、製造業部門には大企業には珍しくイノベーションマインドが存在すると紹介されることもあります。

しかし、基本的にはトップダウン型のマネジメントであり、社風はM&Aを繰り返した結果として出来上がったものでしょう。
M&Aを繰り返さなければ、社内を変革できなかったのです。(GEに限った話ではありません)
その意味では安定志向の従業員には厳しい職場かもしれません。

現在のCEO(最高経営責任者)であるジョン・フラナリーは、事業のリストラクチャリングを進めており、電力や航空機、医療機器に経営資源を集中することで収益の回復を目指していると報道されています。

GEはあまりに巨大で複雑な組織であるため、会社の実態が投資家やアナリストから見えないと批判されていることが影響しているでしょう。 
そして、コングロマリットと言う形態は会社としてのガバナンスやマネジメントを難しくしているでしょう。
GEとは何なのかが誰にも分からなくなっているのです。(存在意義が不明確になってしまいます。)

その意味でGE全体に共通した存在意義・目的は「利益を出し続けること」かもしれません。

しかし主力と位置づけている電力エネルギー事業は、需要が減少し不振に陥っています。
また、米証券取引委員会(SEC)が過去の決算について調査に乗り出しています。
日本での東芝不正会計事件と同様、決算の見直しが必要になれば追加の損失計上を迫られる可能性があります。

医療機器や航空機事業が成長していても、GEの将来はまだ楽観できないはずです。
GEの中で適切なマネジメントが機能しているか、つまり形骸化が生じているかどうかが問われることになるでしょう。
それは、国内企業の不正事例を見るまでもなく社内リーダーやキーパーソンのマインドセットに大きく関わる問題です。

「経営」「株主価値」の観点でGEのリストラクチャリングは意味あることでしょう。
その上で、「利益を追求する姿勢」のみが企業の目的となるならば
  現状を最適化するIMPROVEMENT(改善)は出来たとしても
  新しい価値や市場を創造するイノベーション(変革)は難しい
ことは理解する必要があります。
未来の大きな成長にともなうリスクテイキングが難しくなるからです。

現状の最適化だけでは、市場の大きな変化に対応することができません

閉塞感を打開して、大きな利益を出すためには会社と従業員のゴール(目的)設定が重要です。
会社のゴールに対して、従業員が自分のゴールとの関係性にリアリティを持つことが高い生産性につながり、結果的に会社の利益・成長を実現させます。
それによって、意志決定や情報共有に血が通うのです。

「儲け」は手段であり、それだけではリアリティのあるゴールにはなりません。
つまり、中長期の強い動機付けにはならないのです。

組織が大きくなった時、社内・組織で動脈硬化のような老化がはじまることはゴールにリアリティが持てなくなるからです。
人は習慣化された惰性で行動するようになります。
結果的には、「目先のことだけを考える人」「言われたことをする人」を大量に作り出してしまいます。

GEの今後は、アメリカでの伝統的製造業がこれからも成長を続けることができるのかどうかの試金石になるでしょう。

うつみ まさき
コーポレート・コーチ
(株)イノベーション・ラボラトリ
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